IN THE DEEP RAIN

IN THE DEEP RAIN

WHAT’S UP?
プノンペン ⇒ 王宮 ⇒ ゲリラ豪雨 ⇒ 停電
————————————————————————

プノンペンはでっかい街だ。

市内には、王宮もある。

カンボジアに入って変わったのは人当たりの良さだろうか。

 

ベトナムのように物売りもいっぱいいるが、捨てゼリフはない。

ベトナムの印象が悪くなった一つに、この捨てゼリフがある。

『いらないよ』の後に必ずといっていいほどいけすかない顔をし

ベトナム語で捨てゼリフを吐く・・・。

カンボジアに入ってからはそれを感じない。

 

ボクらがファミコンに燃えていたあの頃、

カンボジアは戦場だった。

小さな子供も銃を持ち、かりだされていた。

ポルポト派の兵士になり、べトナム兵の捕虜になり、

今度はべトナム兵として働き、カンボジア兵になり・・・。

つい最近の話だ。

 

そんな子供たちが大人になり

今は市内ガイドをしていたり、

トゥクトゥクを走らせたりと観光客にも笑顔を見せてくれる。

世の中にはこのような状況が多々あるが

自分と同じように年齢をかさねてきた人たちだからこそ

考えさせられるものがある。

拳銃をにぎり、地雷と敵の間をかけめぐる・・・

今は、ハンドルをにぎり、観光客に笑顔を投げかける。

 

ボクらはトゥクトゥクに乗り込み街に繰り出した。

今日一日街を案内してくれる彼は

ボクらが日本人だとわかると

『ナカムラ』と呼んでくれと言っていた。

トゥクットゥク運転手『ナカムラ』

 

街には、フランスからの独立を

強固に感じられる塔がそびえたつ。

彼の眼に今はどう映っているんだろう

 

王宮も見事なものだ。

ただ・・・王宮というより空いてる土地に詰め込んだ博物館に見え、

少しの余裕も感じられなかった(本来はそういうものかもしれないが…)。

王宮

ゆとりのない敷地内

 

メコン川を横目にトゥクトゥクを走らせ、

丘の上にそびえるワット・プノンに到着。

白い屋根の寺院の中には人の背丈ほどあるロウソクが多々置かれ、

黄金の仏像群にボクたちは旅の安全を祈る。

ワット・プノン

背の高いろうそく

仏像群

 

街は薄暗い雲におおわれていた。

 

時間は夕方五時をまわったところ。

セントラルマーケットに寄り、ホテルに戻ろうと思ったが、

マーケットの出店者は基本17時で仕事を切り上げるという。

行き先をスーパーマーケットに変更し、地元フード探し。

 

スーパーマーケットは楽しい。

できれば、その土地々々で見つけては寄るようにしている。

おおまかな適正価格もわかるしね。

が、カンボジアは輸入に頼った国だった。

スーパーに並ぶ商品のほとんどがタイやべトナム、

中国などの周辺諸国からの輸入品だ。

 

特に目新しいものもなく、スーパーを出ると・・・

外は滝のような雨・・・いや滝が降っている。

道は冠水し、クルマやバイクは埋まりながら走っている。

街は冠水状態

ボクらのトゥクトゥクは・・・

木陰で隠れるように小さく待っていた。

 

靴を脱ぎ、裸足で道路を渡り、トゥクトゥクに乗り込んだ。

ナカムラに毎日こんな豪雨があるのか?

と聞けば三ヶ月ぶりだという。

びしょぬれになりながら運転してくれた

 

ぶっちゃけ、大雨は嫌いじゃない。

ちょっとワクワクする。

ランドセルを背負い雨の中を傘なしで走り回っていたこともある。

 

三階の部屋のベランダから

びしょぬれになった洗濯物を取り込みながら

冠水した街を見おろしていた。

落雷で停電になり真っ暗になった街。

 

 

 

 

その中心に自分をポツンと置いてみる。

真っ暗闇の中、大雨の中、そこが戦場だったら・・・

 

 

 

 

ボクの右手にファミコンのコントローラーがにぎられていたあの頃

ボクの誕生会に友達と覆面プロレスごっこをしていたあの頃

ボクがワクワクしていたあの頃・・・

 

初めて戦争を近くに感じた

そんな一日だった。

 

text by kzm