KITCHEN CONFIDENTIAL

KITCHEN CONFIDENTIAL

WHAT’S UP?
追悼
—————————————————————————————————-

高校の先輩について少し。

 

ボクが彼と親しくなったのは高校を卒業し

20代前半に屋根の上で瓦を葺いていた頃。

 

この瓦屋で、高校の同級生、先輩が一緒に働いている時期があった。

朝、事務所に集合し

パンをかじりながら一日の行程を各自理解、

トラックに荷をまとめあげ現場へ急ぐ。

江戸っ子調の社長が運転にちゃちゃをいれながら現場へ急ぐ。

現場は特に千葉県内が多く、時には館山まで行ったっけ。

海を見ながら瓦を葺くのも最高だった。

雨の日は、事務所で板金作業。

時に彼が板金中に指をはさみ、作業場が惨事になったこともあった。

そんな状況でも彼はあわてず苦笑いをしていたっけ。

 

彼に再会したのは青山のとあるバーだった。

器用に料理をこなし、酒をだしてくれた。

ボクが以前代々木公園でテント生活をしていた話をすると

同時期に代々木公園横に路上駐車して

毎晩眠っていたという。

そこで出会っていれば一緒に代々木公園でバーでもやってたのにねって。

 

次の再会は船橋だった。

彼は店主でありスタッフであった。

自分色の店をつくると意気込んでいた。

料理はきれいで器用に盛り付け味もいい。

ビールの種類は豊富で

ボクはここで『beck’s』というビールがお気に入りになった。

たまにのぞくキッチンは彼の性格がでているようで

細かくキレイに管理され、掃除も隅までおこなわれている。

フライヤーに油は飛び散っていない。

冷蔵庫には必ずチーズとトルティーヤが用意されていた。

時にボク一人にキッチンを任せ

ボクが出したい料理をお客様にふるまってくれた。

 

彼は本が好きでお互いの本を交換することもあった。

その時ちょうど読み終わったと貸してくれたのが

『キッチン・コンフィデンシャル』だった。

彼からはじめて借りた本だった。

 

  

数年後、彼は店を閉めた。

それからボクは彼に会っていない。

 

店が暇な時、

彼とカウンター越しに話をしていたことを思い出す。

「『ディナーラッシュ』という勢いのある料理人映画があるらしい。

オモシロそうだからそのうち観たいね」

 

そして今日

つい最近彼が亡くなったことを知った。

 

ボクはまだ『ディナーラッシュ』を観ていない。

帰国後、このDVDを探そうと思う。

 

ありがとう。

 

text by kzm